リタファーム & ワイナリーは2013年9月12日、北海道で20番目、 余市町で3番目のワイナリーとして誕生しました。
はじめてリリースするワインは、やはり自分たちらしさを表現したかった。
かつて海を渡りワインを学びに行ったメゾンでは皆、
真剣なまなざしでブドウに向き合い、悩み、そして楽しんでいた。
ワイン造りの原点に触れた貴重な時間だった。
今、ワイナリーという自分の城のなかで、思う存分ワイン造りができるようになった。
「ファーストリリースは無難に行くべきだ」という周りの声に迷ったこともある。
何か1つでも自分たちらしさを表現しよう、そう決心したらやはり瓶内2次発酵しかない。
しかも醸造家の仲間から「やめたほうがいい」と止められた「梨」で。
酸が少なく、phも低い。ある人には「醤油みたいになるよ」と言われた。
私たちは余市の洋梨の力を信じた。
酸化防止剤を使用せず、すり下ろした洋梨を丁寧に布で包み、重ねて搾る作業。
時間がかかり、すぐに酸化し茶褐色になる。一日に搾れる量はごく僅か。
どうなるのか。
一次発酵が終わると還元臭も強く、最初の芳香さは、すでになくなっていた。
いよいよ2次発酵だ。瓶に詰め、発酵が始まった。もう戻れない。
12月の厳しい寒さのなか、静かに発酵が始まった。
低温でゆっくり、時間をかけて発酵が進む。
瓶の底から、きめ細かな泡がのぼっていく。
そして完成した。
グラスにそそいだその泡は、まるで酵母が呼吸をしているよう。
洋梨の芳醇な香りが蘇った瞬間。
けして華美ではないが、素材そのままの自然な味わい。
これこそ、自分たちらしさ。リタファームらしさ。